本棚から本が落ちる。本棚から本が落ちる。本棚からさらに本が落ちる。
本棚から落ちた本が頭に当たる。
頭に当たって知識が落ちる。
知識が落ちて床に散らばる。
床に散らばって絨毯に染み付く。
その絨毯を僕は掃除した。
掃除機をかけても無駄だった。
ダイソンでも無理だった。
ぞうきんで拭いても無駄だった。
てか絨毯をぞうきんで拭いて良かったっけ。


そんなこんなで僕は絨毯を捨てることにした。
絨毯を捨てたらフローリングがむき出しになった。
なんだか寒いので新聞紙を敷いた。
その新聞紙は何だか分厚かった。
分厚いくせに、薄かった。
薄いくせに、多かった。
無駄な文字をはたき落とした。
床に文字が散らばった。
一つ文字を踏んづけてしまった。
なんだかツンツンしてて痛かった。


むしゃくしゃして文字を投げた。
壁に刺さった。
楽しくなって一人ずっと手裏剣ごっこしていた。
壁は痛そうだった。
僕は気付いて謝った。
文字を引き抜こうと思って壁に近づいたら
文字はもはや刺さっているのではなく、はりついていた。
これはいけないと思ってゴシゴシこすってみた。
ダメだった。
ぞうきんで拭いても無駄だった。
洗剤付きでも無理だった。
もちろん、消しゴムも試した。


しばらくして僕は絨毯を思い出した。
絨毯に染み付いた知識は文字を失っている。名前を失っている。
あいつらは文字を欲してると思った。
だから僕はゴミ捨て場に走った。
良かった、まだ絨毯は残っていた。
絨毯はうねうねしていた。
僕は何とか家に持って帰った。
頑張って絨毯で拭くと、案の定文字は消えていった。
絨毯が黒くなった。
柔らかかった絨毯がさっきよりツンツンしてる。
気持ち悪かったけど、しょうがないから頭にこすりつけた。
軽かった頭の中がもとに戻った。
どうやら落とし物は返ってきたようだ。


それでもひらがなの「ぬ」がずっと壁に残ってた。
それからというもの「ぬ」を欲する絨毯を探してた。
今日やっと見つかったんだけど、逃げられた。
「ぬ」だけ取って逃げやがった。
またそいつを探すはめになった。
誰か「ぬ」を欲する絨毯知りませんか?探してるんですけど。